コトノハ|編集と出版

コトノハメディア135 コトノハがわかる

みんなのわがしごと①〜青と夜ノ空 中村克子さんの場合〜

wagashi asobiの初の単行本『わがしごと』。
おかげさまで、和菓子好きな方たちや、何か新しいことをはじめたい人たちから好評をいただいております。

今回、新しくスタートする企画「みんなのわがしごと」をお届けします。

職業により異なる仕事。

手を使ったり、頭を使ったり、世の中にはさまざまな仕事が存在しています。
「みんなのわがしごと」では、これから世の中で働くさまざまな人たちの仕事に焦点をあて、
その仕事がどういう仕事なのか、仕事をしていてどんなところが楽しいのか、辛いのか…について
お話をうかがっていきます。

仕事について考えている方、悩んでいる方へ。

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吉祥寺駅から五日市街道沿いをしばらく歩くと見えてくる、小さな本屋さん「青と夜ノ空」。
落ち着いた店内には、店主の中村さんが丁寧にセレクトした新刊と古本が一緒に並べられており、
また、おもに週末には同店でワークショップやイベントも精力的に行っている。
中村さんは、出版社や編集プロダクションでの雑誌や広報誌の編集を経て独立。このお店を2014年10月立ち上げ、以来、1人で営んでいる。
8月7日(日)には、同店で『わがしごと』著者の1人であるwagashi asobi稲葉基大さんと中村さんによるトークイベントの開催を控えた今、中村さんに小さな本屋の「わがしごと」をうかがった。

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──現在のお仕事について、具体的に教えてください。
yajirushi-01青と夜ノ空では、おもに衣食住に関係した本(古本・新刊本)や、その他、リトルプレスや絵本などを扱っています。古本は買取も行っていますが、販売している本の大多数の本は自分で選んでいます。

また、本の販売とともに、ものづくりを中心としたワークショップや展示、本のトークイベントなども定期的に開催しています。

──長年、編集をやられていたそうですが、なぜ、編集から本屋を始めようと思ったのですか?
yajirushi-01まず最初に、人が集まってコミュニケーションできる場所を作りたい、という想いがありました。私は元々ワークショップに参加するのが好きで、以前はアノニマ・スタジオさん(*1)をはじめ、色々な場所で開催していた料理やものづくりをテーマとしたワークショップに時折参加していました。

そこから、自分でも何かしたいと考えるようになって、イベントスペースを作ろうと思い始めました。その意味では、もしかしたら本屋ではなくカフェなど他の業種でもよかったかもしれないのですが、編集という仕事の経験や本が好きということから本屋にしました。

ですので当店にとって、本の販売とともに、イベントの開催は大きな存在だと思っています。

*1 アノニマ・スタジオ:「ごはんとくらし」をテーマに本づくりをする出版社。
http://www.anonima-studio.com

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──これまではどのようなイベントを?
yajirushi-01何かモノをつくることが多いですね。これまでは、篆刻や花のリース、水出しコーヒー、革のサンダル、円空仏づくりなどのワークショップを行ってきました。最初に行った篆刻は数年前から自分でも習っているので、先生をお呼びして講師をしてもらいました。

参加した方が、“楽しかった”“良いものをつくることができた”と言って下さると、とても嬉しいです。ものづくりの楽しみをみんなで共有したり、その場を楽しく過ごしてもらえたらと思います。

──店内の雰囲気がとても落ち着いていますが、“場”としてのこだわりはありますか?
yajirushi-01店の雰囲気づくりを大切にしていて、来店していただいた方が心地よく過ごせる空間になるよう心がけています。古道具が好きだったこともあり、店内でも木を基調にした使い込まれたテーブルや本棚などを使っています。

これは店を始めてから気づいたのですが、本、そして古道具には植物がよく合います。生花もいいですが、ドライフラワーもしっくりときます。時々お客様から「雰囲気がいいですね」「くつろげる店ですね」と言っていただいたり、「このミシン台のテーブルはどこで買ったんですか?」と什器について質問されることもあります。

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──お仕事の中で大切にしているのはどういう部分ですか?
yajirushi-01大型書店ではできない、個人書店ならではの仕事をしていきたいと思っています。その一つが、個人に向けた本のコンシェルジュのようなサービス「青と夜ノ空セレクト便」です。これは申し込みから3か月間、当店でセレクトした本を1か月に1冊ずつ送るサービスです。お届けする本は、あらかじめ暮らしを中心にしたテーマの中から4つのコースを選べるようになっています。

これは以前、話題になっていた北海道のいわた書店さんが行っていた「一万円選書」(*2)というサービスを知り、また知人からのアドバイスもあり、当店でも選書をして送るサービスを企画しました。他の人から勧められて読む本というのは、自分ではふだん選ばないものであればなおさら、それを読むことで新しい発見があると思うんです。

*2 一万円選書:事前にとったアンケートを元に、北海道砂川市いわた書店の社長、岩田徹氏自ら選書した約1万円分の本が郵送されてくるサービス。

サービス開始当初は、お客様がすでに持っている本を送ってしまう可能性もあるかなと心配な面もありましたが、本の感想をいただけたり、リピーターとなって何回も連続で申し込んでいただけたる方がいたりと、嬉しいことがたくさんありました。また、ご友人の誕生日プレゼントとして申し込んでくれた方もいて、プレゼントとして活用してもらう方法もあることに気づきました。

──お店をお1人でやられているということですが、実際、大変ではないですか?
yajirushi-01経営のほうはまだ課題があります(笑)。実作業に関しては自分ができる範囲でやっています。本の発注や届いた本を並べたり、イベントの打ち合わせや本を読んだり、その他、事務処理などありますが、時間が足りないということはないですね。ただ、何か企画を立てたり、アイデアを考える時には相談する相手がいたほうがいいかも、と思うことはあります。

──お店を始められて、1年と9か月。実感として何か思うところはありますか?
yajirushi-01人の輪が広がっているのをすごく感じます。それはお客さんであったり、ワークショップの講師の方など、いろいろ協力していただける方であったり。編集の仕事でも出会いはありましたが、今、お店をやっているほうが、人とのつながりをより強く感じますね。

売る側に回ったからかもしれませんが、本ってやっぱりいいな、と思います。昨今、「本が売れない」と結構言われていますが、本好きの方というのは確かにいて、本を好きな方は、本を大切にしていらっしゃいます。

本というのは1冊1冊、特徴を持って制作されて売られていると思うんですけれど、良いところをちゃんと紹介するのが本屋さんの仕事だと思います。どんな本でも良いところがある。それは表紙が良かったり、内容が良かったり。当店ではそうした“本の特徴”を紹介して売るようにしています。FacebookなどSNSでもほぼ毎日本を紹介していますが、多くの人にその本の良さを知ってもらいたいと思っています。逆に、お客さまとの会話から新たにその本の魅力を教えてもらうこともよくあります。また本棚のディスプレイでは、季節に合わせたり、その時々のテーマを設けてコーナーをつくるなど工夫をしています。
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──仕事の中で悩みはありますか?
yajirushi-01個人で店をやっていると、定休日以外、外に出られないというのがあります。わかってはいましたが、慣れるまでに時間がかかりました。行ってみたい場所やイベントがあってもスケジュールが合わず、行けないということも多々あります。ですので、休みの日をいかに充実させるか、というのが大切になっています。ただ、なかなか仕事とプライベートの切り替えがうまくいっていないのが現状です。

──本を読むこともそうですが、生活と仕事はどういう関係にありますか?
yajirushi-01「仕事=生活」とは思いませんが、今は店の仕事が中心となっているので生活の大半を占めていると思います。本を読むことは習慣になっていて、仕事で必要だから読んでいるのか、プライベートで読んでいるのか、境目がないですね。

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──お店に置く本を選ぶのに自分の中での基準みたいなものはあるんですか?
yajirushi-01セレクトのポイントとして、まず「自分が読みたいかどうか」。そして、「日々の暮らしを豊かにしてくれるような内容かどうか」という点です。
また、表紙や紙面のデザインも選ぶポイントです。何より、「良い本」というのは、トータルで見てしっかりとした構成になっているものです。ですから、その本で表現したいことが、きちんと表現されているかどうかを確認してから置くようにしてます。

──「本との出会い」の場や機会を提供しているんですね。
yajirushi-01そうですね。本って人が生きていくなかで必要不可欠なものではありませんよね。本好きな人はいますが、本を読まない人もいます。ただ、本を読むことで生活が豊かになったり、人生のターニングポイントで役立つような特別な本と出会ったりすることがあると思います。そういった大切な本との出会いの場が、当店であったなら嬉しいです。

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──これから挑戦したいことを聞かせてください。
yajirushi-01これまで、ワークショップでは講師の人を招いて開催していますが、私自身で何か開きたいとも思っています。例えば読書会を開くなど。そのほか、何かできないかと模索中です。

──最後に『わがしごと』の本についてもおうかがいできれば。 
yajirushi-01まず、『わがしごと』というタイトルがとても良いと思います。
また、読んでいくなかで、大切なキーワードがいくつも出てきたのも、とても参考になりました。

特に、仕事に対する姿勢や店を構えるという点で、勉強になることや共感することがたくさんありました。 “目の届く、手の届く、心の届くお店のサイズ”で展開しているのがすごいと思いますし、当店もそうありたいと思っています。

wagashi asobiさんの人気が高い理由は、「人に喜んでもらいたい」という気持ちありきで和菓子をつくり、提供する、という考えのもと活動しているからだとわかりました。
また、和菓子文化の奥深さに驚きました。和菓子にはまだまだ可能性が広がっていると感じます。和菓子文化の根底にある“おもてなしの心”は、日本人が大切にしていくべき心、姿勢だと思います。

今度、当店で開催するイベントで、稲葉さんにお聞きしたいことはいろいろあるんですが、本の中でキーワードとして書かれていた「せいぜいを知る」、「地域と密接に関わっていく」、「仕事=社会貢献」、「必然性を意識する」、について詳しくうかがっていきたいです。わざわざ遠くから足を運んでくださる方もいるので、楽しい時間を提供できれば、と思います。

──イベント楽しみにしています。ありがとうございました。

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写真提供: 角田 純子

■青と夜ノ空

〒180-0003
東京都武蔵野市吉祥寺南町5-6-25
Tel 070-1403-6145
Open 12:00〜20:00
Close 水曜日

■『わがしごと』刊行記念トークイベント「“wagashi asobiというしごと”」

・日時:8月7日(日)18:30~19:30
・参加費:1500円(お茶つき)
・定員:15名程度
・お申し込み:e-mail info@aotoyorunosora.comまで、
 件名を「8/7トークイベント申し込み」とし、お名前、電話番号、参加人数をお送りください。
※お申し込み時に「wagashi asobiさんへの質問」を受け付けます。
 聞きたいことがございましたらお送りください。
※当日、トークイベントの時間帯は貸切になります。

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